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新宿八犬伝 第五巻 犬街の夜

第三エロチカは二十代の自分に大きなインパクトを残した劇団であり、
多くの奇形な役者たちと作演出の川村毅が描き出す猥雑でパワフルな
劇空間はじゃがたらや東京ロッカーズを追いかけながら
新宿成子坂下の地下の稽古場で汗を流していた俺には刺激的であった。
その後自分は明大学生会館地下で稽古をしていた演劇舎蟷螂に入団、隣にいたのは
エロチカであった。
川村は85年、新宿八犬伝第一巻犬の誕生で岸田戯曲賞を受賞、以後も一連の新宿八犬伝
シリーズ、ニッポンウォーズほかで80年代を駆け抜ける。
90年代に入りエロチカ名義、プロデュース公演を平行していたようだが、
個人的には足が向かなくなったので正確にはよく知らない。
今回は結成30周年、そして解散を記念する公演ということ、
丸山厚人君からもお誘いをいただいたので新宿歌舞伎町に足を運んだ。
廃墟をイメージしたシンプルな舞台にマカロニウエスタンのテーマが
流れ、台詞を撒き散らし、バタバタと動き回る役者たちは
確かに見慣れたエロチカの風景ではあったが、そこには未熟で散漫な
劇空間ばかりが目立ち、ワクワク感はなく退屈で時代遅れ、
錆びたナイフのように鈍い切れ味で必死に時代を切り取ろうとしていた。
壮大な虚構の物語は入り組んではいるが興味深く腰を入れて見たいのだが、
スカスカで空回りし、お寒い時代遅れのギャグはしらけ、
役者がかみ合って空気を支配するような場面もなく前半が終わった。
「犬街の夜」は、現代の新宿の闇の向こうに現れる、もう一つの世界、
失踪した愛犬捜査の依頼人姫川まき(広田レオナ)、
新宿のよろず相談所長新宿ジャンゴ(小林勝也)、
新宿八犬伝伝説を追う東スポ記者(桜田聖子)にキャバレーの踊子、
刑事、どこか犬でどこか猫な歌舞伎町の住人・・・
後半、犬が人間を支配する犬街に入って話が展開する。
ミステリアスでコケティッシュな魅力を振りまく
姫川のなぞ解きを追うことで前半ほど退屈でないものの、
八剣士が浮かび上がるそれぞれのシーンでも盛り上がりはなく、
すべてのなぞが解き明かされることでその幻想劇が
生身の感動を持って客席に共有されることもなかった。
歌舞伎町にこだわることがまたうそ臭く、
元キャバレーというロケーションを使いながら、
最後に実際の新宿の夜が舞台裏に登場すればいいのに
新宿の看板の寄せ集めが舞台装置として現れ興ざめした。
かつて心酔した劇団だけに寂しい思いがしたが、
それも演劇である。




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