さすらいを求めて川崎から来た女性

金曜日開店前のシャッターのまえに
ひとりの女性が立っていた
前日電話で克美しげるの「さすらい」を
聞かせて欲しいと言った70近い女性だった
KATSUMI
開店準備をおおまかに済ませると
店内で待ちわびていた彼女に
そのなつかしいドーナツ盤を回してやると
歌詞カードで歌詞をなぞりながら
感慨深く聞いていた
曲が終わるともう一度聞きたいと言う
またターンテーブルを回した
「歌がうまいわねえ、克美さんは」
と言った
そして曲が終わる
「もう一回聞かせてください」
彼女は迷わず嘆願した
高田純次の"じゅん散歩"で紹介されて以来
70前後のお年寄りから日に10本以上電話をいただく
「古いレコードがあるんですか?」
「〇〇はありますか?」
それらのほとんどが昭和30年代前半の歌謡曲だった
今この年代の方たちは
音楽を捜す手段をもっていない人が多い
そう感じた
この女性もそんな思いで
川崎から電車に乗って来たのだと言う
実は克美しげるは再起をかけた新曲の営業に
不倫が表ざたになることを恐れ、
その女性を殺害し服役したのだった
だから彼の歌はCD化されないし、
ラジオからもテレビからも流れることはない
しかしこの女性にとってさすらいは
青春の思い出の詰まった
大切な宝物のような曲なのだろう
彼女はそのあと西城秀樹の蜃気楼
という曲がCDでないか?
と尋ねた
彼が歌手生活40周年を記念して
21年ぶりにリリースされた
オリジナルアルバムに収録された曲だった
2003年に脳梗塞に倒れ、
11年に2度目の発症で右半身まひ,
そこからリハビリを経てカムバックしてきたのだ
うちにはなかったがありませんとは言えないだろう?
こら、なんとしても彼女の力にならんと
新品で取り寄せるからもう少し待って欲しいと伝えると
ニッコリ笑って「よろしくお願いします」と言った
うちは大手の〇〇レコードでもなければ
マニアが集う〇〇ユニオンでもない
だから時には商売の枠を越えても
お客さんに喜んでもらうさ
そういうことが出来るから俺がレコード屋を
やってる意味があるわけだ
さすらい、なんとかCDに落として
プレゼントしてやりたいな
いつでも思い出に浸れるように!
スポンサーサイト

コメント

非公開コメント