銀幕迷宮の旅

小松杏里さんの新しい劇団、d'Teater公演を
明石スタジオに見に行く。
高円寺でやるというのもあったが、
演目が蟷螂時代に二度上演した『銀幕迷宮(キネマラビリンス)』
であったのと、小松夫人の門田からメールをもらったり、
今回、カワシマを演じる丸山君は元唐組出身で、
ヨーロピアンパパのお客さんであり、
高円寺大和町の住人でもあり、熱心に誘いを受けたこともあった。
これは映画監督川島雄三を題材にした謎めいたフィクションである。
私事ではあるが(自慢めいたらゴメン)
キネマの初演を見て蟷螂という劇団に惹かれ、
翌年、入団に至る。
そして1987年、劇団としては初の本多劇場進出がこのキネマ、
念願叶って思い入れの強かった“迷宮売り”という役をいただいた。
『幕末太陽伝』に主演されたフランキー堺さんが楽屋を
訪ねてくださったことを思い出す。
当時のもろもろはまたの機会にして、
今回、若手中心の劇団で、この21世紀にこのお芝居をどうやってやるのか?
小松さんが自らの代表作を再演するのだから、
何らかの企みはあるのだろう、そんな思いで明石へ。
風の音から始まり、旧態としたアングラなプロローグの佇まい
のオープニング、
狭い小屋で若い役者たちの動きは観客をぶれさせた、
不安な立ち上がりであった。

音楽も同じだと思うけど、自分のスタイルというものは、
そうは変えられないものだ。
が、時代の要求に応えて、
手法として時代をうまく取り込むものもいれば、
時代に線を引いて頑なにそのスタイルに固執するものもいる。
時にそれは時代と共に風化して無残な姿を晒す場合もある。

しかし話が進むにつれ、拙さ、ぎこちなさを含みながらも
迷宮の輪は徐々に広がりを見せ始めた。
カワシマは一人の存在としてしっかり演じられており、
中盤から後半、カワシマの現実と虚構が交錯する物語は、
時代背景や作者の映画へのオマージュを越えて
映画館体験をほとんだ持たないアニメ、CG、ゲーム世代の
若い観客を舞台に惹きこんでいたように思う。
台本はそのままであったから当時の記憶も
甦ったが、客観的にこの芝居の持つ引力が十分に有効である
ことを改めて感じることが出来たことは、
今の自分にとってとても収穫と呼べるものだった。
観劇後、飲み屋で小松さんをはじめ、丸山君、その他の
俳優たちと話をする機会に恵まれた。
熱い思いがあり、迷いがあり、それはエネルギーを
伴って語られた。
まあそんな大げさに言うこともないか、
いつもの光景ではあるが、紛れもなく芝居に対する思いを熱くする
一日であった。

今週の日曜まで高円寺の明石スタジオでやってます。
よかったら見に行ってあげてください。

では、乾杯!
スポンサーサイト

コメント

非公開コメント