ボブ・ディラン・ジャパン・ツアー2016.4.26 オーチャード・ホール後編


BOB DYLAN AND HIS BAND / JAPAN TOUR 2016
APRIL 26TH 2016 ORCHARD HALL ,SHIBUYA,TOKYO,JAPAN
◆後半◆
休憩が少々長いなあと思っていると
チャーリーのブルージーなギター・インストが
突然始まって
重なるように
バンジョーが鳴り
⑪HIGH WATERがスタート
2000年前半のハードなバージョンより
カントリーっぽさが加わるものの
現在のディランの立ち位置が確認出来る
最重要ナンバーで
ヘヴィーなドラム・サウンドと
ダブル・ノートの力強いギターリフ、
ペンタトニックのブルージーな
リックが飛び出す間奏など
ブルース・ファンには美味しさてんこ盛り
2016BOB11
そしてまたムーディなシナトラ・カバー
⑫WHY TRY TO CHAGE ME NOW
今回は昨年のアルバム、今年のミニアルバムの
ムーディ路線をサンドイッチにして
セット・リストを組んでいるのだが
これは人によってはかなり眠気を誘う
雰囲気にもなって実際コックリコックリって
お客さんはちらほらいた
あの全体をスティールのもわっとしたエコーで
包んだオブラートのようなサウンドが
また誘発してくれるんだなあ
でもその中にイマジネイションを働かせて
ディランの歌に耳を傾ければ
バックの市松模様の照明に
見え隠れする懐かしい風景が浮かんでくる
御大は気持ち良く歌ってらっしゃる
2016BOB9

そして一転して
シカゴ・ブルースのリフを支柱に据えた
"TEMPEST"からの⑬EARLY ROMAN KINGS
このあたりからディランの声の張りが
コンサート前半よりがぜん出てきた
単純なリフレインの中に
思いをぶつけるように言葉を投げつけるように
歌うディラン
荒々しいレスポールの音
スライドプレイ、バンド・サウンドを自在操るように
ディランは気高く振舞った
⑭THE NIGHT WE CALLED IT A DAY
"SHADOWS IN THE NIGHT"からの
ジャズ・スタンダードは格別だった



『月が出ていた でも雲が漂ってその顔を隠してしまった
君は僕に口づけをすると行ってしまった 僕たちが終わりにした夜

天体の歌が聴こえた かすかな哀歌のようだった
もう祈る気力もなかった 僕たちが別れた夜

暗闇を通して優しく 空にフクロウが啼く
悲しい歌だが 僕ほどブルーじゃない

月が沈み 星も消えてしまった
でも夜明けが来ても 陽は昇らなかった

言うべきことはもう何もなかった 僕たちの最後の夜…』





切なく甘くこのロスト・ラヴ・ソングは僕の胸を震わせた
この日のハイライトと言っていいだろう
ディランは今回、ギターはもちろん、
ハーモニカさえ2曲で聞かせるだけ
思うに彼は本当にヴォーカルに集中して
70を越えた死との距離を
スタンダードに託し
「今」の自分を歌いたかったんじゃないだろうか?
⑮”SPIRIT ON THE WATER”
フォービートのスイング・ナンバー
ディランは放り投げるような歌い方で
回りくどくも少年のような愛の告白を聞かせる

⑯SCARLET TOWN
”セニョール”Señor (Tales Of Yankee Power)、
”コーヒーもう一杯”ONE MORE CUP OF COFFEE
の系列に属す哀愁たっぷりのバラード
ここら辺りからいよいよディランの真骨頂


ベース・ラインがとても印象的で
後半からスティールがこのラインを
なぞってじわじわと曲の世界へ引きずりこんでいく

『スカーレット・タウンに5月が訪れ
立派なウィリアムスは死の床に横たわっている
ベッドのそばに奥方のメアリー
彼の顔に口づけする
そのこうべは祈りで覆い尽くされる


どこまでも勇敢で、誠実で、優しい彼
わたしは彼のために悲しみの涙を流すだろう
彼がわたしに流してくれるように
リトル・ボーイ・ブルー
おまえの口笛を吹き鳴らしておくれ
わたしが生まれたスカーレット・タウンで


もし恋が罪なら 美しさは犯罪となるだろう
人々の時間の中では何もかもが美しい
黒と白 黄色と褐色の肌の人
ここスカーレット・タウンでは
あなたのためにすべてがある』
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⑰ALL OR NOTHING AT ALL
来日記念EP『MELANCHOLY MOOD』から
軽快なスウィングでおくるシナトラ・カバー

『全てを取るか、全く諦めてしまうか

半分だけの愛など僕には興味がない

君の心が僕のものとならぬのならば

むしろ何も無いほうがどれましか』

なぜディランはここまでシナトラに固執するのか?


⑱LONG AND WASTED YEARS
”TEMPEST”
ゆっくりとやさしいサウンドに乗せ
失われた20年の時を悔いて
言葉があふれる


⑲AUTUM LEAVES
”SHADOWS IN THE NIGHT”

窓辺に散りゆく落ち葉に
自らの人生の終末を重ねるように
静かに歌うディランに
多くの年配者は万感を持って
受け止めたことだろう


このあまりにも有名なスタンダードを
歌って本編は終了する

熱狂や興奮で場内を満たすのではなく
ゆっくりと低空飛行して
静かにショーのエンディングを飾ってみせた
と言ったら言い過ぎだろうか?

2016BOB8


Encore:
⑳BLOWIN' IN THE WIND
”FREEWHEELIN'”
アンコールを求める手拍子がひとつになるころ
澄んだヴァイオリンの音色とピアノが絡み合い
ゆっくりとディランの代名詞が歌われる
How many roads must a man walk down.....
人生の答えは風に吹かれ吹かれて
流されても誰にもわからない

諸行無常でありなんす


後半ディランは
執拗に
ハーモニカでやるように
歌いながら
ソソソソソソソ ソファミ レドレ
をピアノで叩く
ヒラメロ、サビを通して叩き続ける
やんちゃ子のようなディランは少しも変わらない


21LOVE SICK
”TIME OUT OF MIND”
からの必殺ナンバーが
最後を締めくくる
マイナーコードのダウン・ストロークが
ダークな音色で舞台を染め上げていく
メリハリの効いたリズムと
ワイルドなギター・サウンドが
エキセントリックに響きわたる
アンコールではロック・スター然と
立ち尽くすディランがカッコよく
今度はドラマティックに幕を閉じた

やっと立ち上がる観客たちの前で
メンバー全員が首(こうべ)を垂れることなく
一枚の絵となってポーズ
全ての物語に幕を落とす
旅芸人はまた彼の地に向け旅を続けるのだろう
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